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軽さは耐震性にあらず!

[軽さは耐震性にあらず]

 岩手や青森で最大震度6強を記録した7月24日の地震で建物被害が少なかった点について、「屋根が軽ければ柱にかかる荷重が減り、構造上、地震に強くなる」と東北大学の源栄正人教授(地震工学)のコメントが日経朝刊社会面に掲載された。
 確かに建物に働く地震力は重さに比例して大きくなり、軽い方が地震力を低減できる。しかし基礎や地盤、構造や経年変化に触れず、軽さを耐震性と評価する見解は、業界のみならず一般社会でも誤解を招き、屋根と地震の誤った知識にもつながるのであえて反論したい。
 そもそも木造2階建の建物の耐震性は、その建物の重さに応じて壁量などが決められる。建築基準法に則ってきちんと設計・施工された建物ならば、経年変化を度外視すれば、重い建物でも軽い建物でも同レベルの耐震性能を有している。
 住宅金融支援機構が作っているパンフレットでも、建物の耐震性の要は基礎や構造で、屋根には一言も触れられていない。にもかかわらず学識経験者が「屋根が軽いから地震に強い」というのは本末転倒ではないか。
 本誌7月18日号のインタビューで(財)日本住宅・木造技術センター試験研究所の岡田恒所長は、「実は、重い屋根の方が耐震性の安全率は高い」と述べている。冒頭のコメントとは正反対の意見だが、瓦業界への応援歌として岡田氏の見解を支持したい。
 基準法通りに設計された建物は重い建物の方が壁量が多い。一方、耐震性の安全率は重い建物も軽い一定だ。仮に2階部分にピアノを置くなど余分な重さがあって地震が発生した時、重い建物の方が耐震性に余裕があるとの指摘だ。
 姉歯事件、基準法改正、瑕疵保証、200年住宅。建築はより安全で高耐久な方向に動いている。その中で「屋根を軽くして耐久性を確保する」のは「小手先の理屈」に過ぎないのだ。

日本屋根経済新聞 第1230号より

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